サトリ 上・下(ドン・ウィンズロウ/ハヤカワ・ノヴェルズ)

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序盤は自陣の形をつくるところから

序盤はまず囲碁でいえば自陣の形をつくるところから始まる。定石どおりに打ち始め、盤上は白と黒の石が敷き詰められていく。まだ物語りは始まったばかり。攻めるためにはその前段階が必要だ。
だからこの上巻の半分もその一見ゆっくりとした布石の描写が多く、少しだけスピードが遅い。もちろん後半に行くに従い、その速度は凄まじい勢いで進んでいくのだが。
盤上は白と黒の石だけでなく、赤や金も入り混じりもはや混沌とした世界に変貌していく。主人公は何色に染まっていくのか、もしくは変化するのか。SATORIとは果たして何色なのか。どのような状態なのか。ヘルの冒険は後半へ続く。

盤上は一進一退。

盤上は一進一退。死活を見極め慎重に大胆に攻めるヘル。SATORIとは白と黒、攻めと守り、愛と憎しみ、羨望と嫉妬の両方を知り、その中央に自身が存在すること。
もはや個人としての存在は薄くなり、生命体としてのみの存在となる何者でもない誰かと変化していく主人公。テンポ良く進んでいき、物語のスピードはやや荒っぽいくらいにスピードアップしていく。そのため乱雑に打たれたような石の一つ一つに意味は無く、その打ち手の筋がそれないことだけが生命線。

もはや囲碁ではなく、3次元的な軍儀の世界

もはやこのゲームは囲碁ではなく、3次元的なまさにHUNTER×HUTERの軍儀の世界に突入し、資本主義と共産主義、独立と支配という世界の思惑を利用しながら自分の信念を守り生き延びる一人のスパイの物語は一旦幕を閉じる。ドン・ウィンズロウを読んだことがなければぜひ読むべき物語。翻訳のレベルも高く、ページをめくる手を止めさせてくれない。 そしてその面白さはあなたの想像力がベース。読書は極上のエンターテインメントであると改めて教えてくれる。

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